腎細胞がんとは
腎臓について
腎臓は握りこぶし大ほどの大きさで、そら豆状の形をした臓器です。腹部の胃や肝臓などの裏側(背中側)の左右に1つずつ腎臓があります。
腎臓は、主に血液をろ過して尿をつくるはたらきをしています。
腎臓の「腎実質」には細い血管(毛細血管)がたくさん集まっていて、血液中の老廃物や余分な水分を取り除いて、尿をつくります。腎実質でつくられた尿は「腎盂」に集まり、尿管から膀胱へと流れていきます。
腎臓と周囲の構造
腎細胞がんについて
「腎細胞がん」は腎実質の細胞ががん化したものです。
腎実質は血管に富んでいるため、がん細胞が血液の流れにのって他の臓器に転移(※1)しやすいことが特徴です。
腎細胞がんは腎がんと呼ばれることもありますが、腎盂から発生したがんは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは異なるがんとして扱われます。
腎臓と腎細胞がん
※1 転移(てんい)
最初にがんが発生した部位のがん細胞が、血液やリンパ液の流れにのって、他の臓器に移動して、増殖すること。
症状
腎細胞がんの症状として、初期は自覚症状をほとんど認めません。健康診断などで腹部の画像検査を受けたときに偶然発見されることが多いです。
進行して、がんが大きくなると、血尿、腎臓のあたりの痛みや腫れ・しこりがあらわれたり、発熱、体重減少、貧血などの全身症状があらわれることがあります。
一方、無症状のまま進行し、他の臓器に転移してはじめて、症状が認められることもあります。
進行した腎細胞がんの症状
原因
腎細胞がんの発症には、さまざまな要因が影響していると考えられています。
喫煙者や肥満、高血圧、腎疾患のある方、有機溶剤などを使用する職業の方で、腎細胞がんの発症リスクが高いといわれています。また、一部の腎細胞がんでは、遺伝子異常[VHL(※2)など]が発症に影響しています。
※2 VHL(von Hippel-Lindau:フォン ヒッペル リンドウ)遺伝子
腎臓の細胞ががん化するのを抑えるはたらきをする、がん抑制遺伝子のひとつ。生まれつきVHL遺伝子に異常があるVHL病患者さんは腎細胞がんを発症しやすい。
罹患数
国内における2018年の腎臓など(膀胱を除く)のがん罹患数(新たにがんと診断された数)は、男性で20,193人、女性で9,569人であり、男女比はおよそ2:1です 1)。
加齢とともに増加し、とくに60~70歳代で多くみられます。
近年、腎細胞がんが早期発見できるようになり、罹患数は増加傾向にあります。
監修:篠原 信雄 先生
北海道大学大学院医学研究院 腎泌尿器外科学教室 教授
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