どんな治療をするの?
治療の考え方
一人ひとりに合った治療方針を検討するために、病期、患者さんの全身状態や、病歴、年齢、合併症の有無などを考慮して、治療方針が選択されます。
初回の治療では、「薬物療法(化学療法+分子標的薬治療など)」と必要に応じた「放射線療法」が検討されます。
初回治療で十分な効果が得られない場合(難治性)やいったん効果が得られがんが消失したかのように見えたあとに再びがんが出現してきた場合(再発・再燃)には、次の治療法を改めて検討します。異なる薬物療法や造血幹細胞移植なども検討されます。
近年には新しい薬剤や治療方法の開発が進み、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の治療成績は向上しているため、寛解にいたる患者さんもいらっしゃいます。
再発・再燃・・・いったん効果が得られても再び悪化したこと
寛解(かんかい)・・・一時的あるいは永続的に、がん(腫瘍)が縮小または消失している状態
初回治療
主な初回治療として、「薬物療法」と「放射線療法」があります。初回治療では、「薬物療法」のなかでも、数種類の抗がん剤を用いた化学療法が行われます。
化学療法(抗がん剤による治療)
従来の抗がん剤による化学療法は、細胞のDNAに直接作用したり細胞分裂のしくみを阻害することで、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。抗がん剤を注射・点滴あるいは内服することによって、薬剤が全身にいきわたるため、検査ではわからない小さな病変にも効果があります。
抗がん剤にはたくさんの種類がありますが、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の初回治療では数種類の抗がん剤を組み合わせる「多剤併用療法」が主に行われます。治療は入院や外来治療で行われ、通常3~4週間を1コースとして、数コース繰り返します。
<副作用>
大量の抗がん剤を投与することが多いため、治療開始から治療後数ヵ月にわたって、さまざまな副作用が起こります。起こりうる副作用を予測して、あらかじめ対策を立てて治療を行います。事前に対策や準備をしておくことで、実際に副作用が起きたときにも落ち着いて、すばやく対処できるようになります。
薬剤によって違いはあるものの、アレルギー反応、吐き気・嘔吐、倦怠感、脱毛や血液に対する副作用が多くの患者さんであらわれます。
分子標的治療
がん細胞の増殖に関わる分子を標的に狙い撃ちする作用をもつ「分子標的治療薬」を用いた薬物療法です。従来の抗がん剤による化学療法と組み合わせて使用する場合があります。
<副作用>
分子標的治療薬はがん細胞に特徴的な分子だけに作用する特性がありますが、その分子は正常細胞にも存在する場合があるため、神経障害、感染症、血液に対する副作用、アレルギー反応、皮膚粘膜障害など特有の副作用があらわれることがあります。
放射線療法
高エネルギーの放射線を体の外から照射して、がん細胞を破壊してがんを消滅させたり、小さくしたりする治療です。原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の初回治療では、患者さんの状態によって必要であれば化学療法との併用で行われます。
<副作用>
主に放射線が照射された部位に起こる皮膚炎・粘膜炎のほかに、全身症状として、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球減少などがあります。症状が強い場合は、それを和らげる治療をしますが、通常は治療後2~4週間くらいで改善します。
救援療法
初回治療で十分な効果が得られなかった場合(難治性)やがんが再燃した場合に行われる治療を「救援療法」といいます。
化学療法(抗がん剤による治療)
救援療法では多くの場合、初回治療とは異なる抗がん剤を組み合わせた化学療法が行われます。従来の抗がん剤による化学療法は、細胞のDNAに直接作用したり細胞分裂のしくみを阻害することで、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。
<副作用>
大量の抗がん剤を投与することが多いため、治療開始から治療後数ヵ月にわたって、さまざまな副作用が起こります。薬剤によって違いはあるものの、アレルギー反応、吐き気・嘔吐、倦怠感、脱毛や血液に対する副作用が多くの患者さんであらわれます。初回治療とは異なる薬剤を使用するため、初回の化学療法とは異なる副作用があらわれることもあります。
分子標的治療
がん細胞の増殖に関わる分子を標的に狙い撃ちする作用をもつ「分子標的治療薬」を用いた薬物療法です。従来の抗がん剤による化学療法と組み合わせて使用します。
<副作用>
分子標的治療薬はがん細胞に特徴的な分子だけに作用する特性がありますが、その分子は正常細胞にも存在する場合があるため、神経障害、感染症、血液に対する副作用、アレルギー反応、皮膚粘膜障害など特有の副作用があらわれることがあります。
がん免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬:
免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫細胞(T細胞)にかけているブレーキを解除することで免疫細胞の攻撃力を復活させ、再びがんを攻撃させる薬剤です。いままでの薬物療法ががん細胞を直接攻撃する作用をもつのに対して、免疫チェックポイント阻害薬は、体の免疫機能を高めることによってがんを攻撃します。再発(再燃)・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の治療で選択される場合があります。
【がんによる免疫機能の悪用】
がん細胞表面にあるPD-L1という物質がT細胞表面のPD-1と結合することにより、がん細胞への攻撃にブレーキをかけるシグナルが発信されます。
【免疫チェックポイント阻害薬のはたらき】
免疫チェックポイント阻害薬はPD-1とPD-L1の結合を阻害することによって、がん細胞からT細胞に送られているシグナルを遮断します。その結果、T細胞のブレーキは解除され、がん細胞への攻撃を再開します。
<副作用>
免疫チェックポイント阻害薬ではがん細胞によって抑えられていた免疫力を復活させるため、免疫がはたらき過ぎることによる副作用があらわれる可能性があります。
CAR-T(カー・ティー)細胞療法:
患者さん自身のT細胞を体の外に取り出し、T細胞にがん細胞の目印を見分ける遺伝子CAR(キメラ抗原受容体遺伝子)を組み入れて増やしてから、再び体の中に戻すことで、攻撃力が強まったT細胞によりがん細胞を攻撃する治療です。この治療法は、実施している施設が限られますが、一部の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の治療で使うことがあります。
<副作用>
攻撃力が高まったT細胞による反応で副作用があらわれる可能性があります。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植とは、大量の抗がん剤投与や全身への放射線照射を行うことで造血幹細胞をがん細胞とともに死滅させたのち、あらかじめ採取・保存しておいた患者さん自身または他人や血縁者(ドナー)の造血幹細胞を点滴で戻す(移植する)治療です。いったん骨髄機能は破壊されますが、移植された造血幹細胞が骨髄で増えて骨髄機能が回復するため、やがて正常な血液をつくれるようになります。強い副作用が伴うことから、年齢や全身状態などから治療に耐えられるか、治療による効果が見込まれるかなど十分検討したうえで、造血幹細胞移植の実施が決定されます。
- 自家(じか)造血幹細胞移植
造血幹細胞移植のうち、患者さん自身の造血幹細胞を戻す治療です。再燃・難治性PMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)の治療で一般的に選択される方法です。
- 同種(どうしゅ)造血幹細胞移植
白血球の型が一致した他人や血縁者(ドナー)の造血幹細胞を移植する治療です。急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群や一部の非ホジキンリンパ腫などの治療で主に選択される方法です。
<副作用>
大量の抗がん剤や放射線照射により、さまざまな副作用があらわれる可能性があります。吐き気・嘔吐などの消化管症状、間質性肺疾患、脱毛、不妊、感染症、貧血・出血、細い血管が詰まることによる消化管や肝臓、腎臓などの重い臓器障害があらわれることもあります。同種造血幹細胞移植では、他人の造血幹細胞が患者さんの体を攻撃する免疫反応や、他人の造血幹細胞に対する拒絶反応が起こることがあります。
生活の質(QOL)を大切にした治療
いくつかのがんの治療法を行っても効果が得られなかった場合、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を維持しながら病気とよりよく付き合っていくことを目指した治療を行っていきます。
近年、QOLの改善を目的として、「緩和ケア」という考えが浸透しています。緩和ケアとは、重い病を抱える患者さんやその家族一人ひとりの心と体の痛み・つらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケアのことです。痛み、吐き気、食欲不振、だるさなど身体の症状だけでなく、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くすること、また、その人らしい生活を送ることができるように、医学的な側面に限らない幅広いケアを行います。「緩和ケア」の考え方を早い時期から取り入れていくことで、患者さんと家族の療養生活の質をよりよいものにしていくことができます。
再発・再燃を見逃さないために
治療によって一度消失したように見えたがんがまた出現してきたり、がんが他の部位に新しく認められたりする場合があります。これらを「再発・再燃」といいます。
寛解に至ったあとも定期的な検査を受けることが大切です。治療終了後も、医師の指示を守って必ず定期検査を受けましょう。
再発・再燃・・・いったん効果が得られても再び悪化したこと(再発について、血液やリンパのがんでは「再燃」という言葉が使われます)
寛解(かんかい)・・・一時的あるいは永続的に、がん(腫瘍)が縮小または消失している状態
監修:照井 康仁 先生
埼玉医科大学病院 血液内科 教授
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