どんな病気?
PMBCLってどんな病気?
PMBCL(原発性縦隔(じゅうかく)大細胞型B細胞リンパ腫)は、悪性リンパ腫という血液のがんのひとつです。
悪性リンパ腫は、がん細胞の形態や性質によって100種類以上に分類されますが 1)、大きくは「ホジキンリンパ腫」と非ホジキンリンパ腫である「B細胞リンパ腫」及び「T/NK細胞リンパ腫」とに分けられます。
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、悪性リンパ腫のうち非ホジキンリンパ腫で、白血球の一種であるリンパ球のうちB細胞と呼ばれる細胞が“がん化”する種類です。
Alaggio R et al. Leukemia 2022; 36: 1720–1748より作成
1)国立がん研究センターがん情報サービス「悪性リンパ腫」(2023年3月時点)
どのくらいの人がなるの?
主な血液のがん(悪性リンパ腫)の患者数
PMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)は、悪性リンパ腫という血液のがんのひとつです。
悪性リンパ腫の患者数は、血液のがんとしてよく知られた白血病よりも多く、日本では年々増え続けています。2022年には悪性リンパ腫の罹患数(新たにがんと診断される人の数)は約3万7千100人と推定されています 2)。
悪性リンパ腫のなかで、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は0.35%であったとの報告があり 3)、まれな病気です。
主な血液のがんの罹患数の推移
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より作図
Aoki R et al. Pathol Int 2008; 58:174-182より作図
30歳代での発症が多く、男女差は人種によって異なりますが、女性が多いと言われています。
2)国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」2022年のがん統計予測(2023年3月時点)
3)Aoki R et al. Pathol Int 2008; 58:174-182
病気の特徴は?
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、「縦隔」(じゅうかく)のリンパ節に、痛みのない腫れ(しこり・こぶ)としてあらわれます。
縦隔の腫れは、急速に大きくなり、10cmを超えることもあるのが特徴です。
臨床検査では、LDH(乳酸脱水素酵素)が高値となることが多いと報告されています。
「縦隔」(じゅうかく)・・・左右の肺の間(心臓と肺以外)の部分
どんな症状があるの?
無症状のこともあります。リンパ節の腫れ(しこり・こぶ)がある、場所や大きさによっては、胸の痛みや咳などの呼吸器症状がみられることがあります。また、心臓に戻る血液が流れる、上大静脈を圧迫することにより生じる症状を「上大静脈症候群」といい、頭痛やめまい、顔や腕のむくみなどが起こることがあります。
全身症状(発熱、体重の減少、ひどい寝汗、全身のだるさ、食欲不振など)を伴うこともあります。全身症状のうち、発熱、体重の減少、ひどい寝汗の3つは「B症状」と呼ばれ、診断や治療のために重要な情報となります。
上大静脈・・・上半身(頭、右手、左手を含む)の血液が心臓に戻るときに通る血管
進行・・・がんの大きさが大きくなる、できた場所から広がっていること
どうして病気になるの?
ここでは一般的な悪性リンパ腫の発症のしかたについて解説します。
がん化したリンパ球が無制限に増えることで発症します。がん化したリンパ球がリンパ管を通じて全身に散らばり、リンパ節をはじめとしたリンパ系組織に集まってかたまりをつくると、リンパ節などの腫れ(しこり・こぶ)がみられるようになります。
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、縦隔のリンパ節で、B細胞ががん化しかたまりとなり、腫れができます。
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)の発症のしかた
リンパの役割はなに?
血液の中には、酸素を運搬する「赤血球」、細菌やウイルスなどの異物から体を守る「白血球」、出血を止める「血小板」などの血液細胞があります。リンパ球は、さまざまな種類がある白血球の中の一種で、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入してくると攻撃・排除しようとする「免疫」において中心的な役割を担っています。リンパ球には、さらにNK(ナチュラルキラー)細胞、T細胞(Tリンパ球)、B細胞(Bリンパ球)などの種類があり、免疫においてそれぞれ異なる役割を担いチームをつくって働いています。
リンパ球のはたらき
リンパ球は、血液が流れる全身の血管のほかにも、全身に網の目のように広がるリンパ管を出入りすることで、体内をくまなくパトロールしています。リンパ管には、リンパ球をはじめとした白血球と血漿などの液体成分がゆっくり流れており(リンパ液)、免疫にかかわる細胞の通り道となっています。
首やわきの下、足のつけ根などの要所にはリンパ管が集まったリンパ節があり、たくわえられたリンパ球が異物がないかをチェックして取り除く「関所」のようなはたらきをしています。このほかにも体の中には、リンパ液が流れこみ免疫の機能に関わっている組織や臓器として扁桃腺、脾臓などがあり、これらとリンパ管やリンパ節をまとめてリンパ系組織と呼びます。
監修:照井 康仁 先生
埼玉医科大学病院 血液内科 教授
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