MSI検査について
MSI検査では、がんの組織のDNAを調べることで、MSI-Highかどうかがわかります。
MSI-Highを調べる検査
がんの薬物療法には、
化学療法、
ホルモン剤(内分泌療法)、
分子標的治療薬、
免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫療法)
などがあり、あなたのがんのタイプに応じて使用されます。
MSI-High固形がんもがんのタイプの1つです。
MSI検査(マイクロサテライト不安定性検査)はあなたのがんがMSI-Highであるかどうかを調べる検査です。
検査の手順
①検査する組織を用意します
検査には手術や内視鏡検査などの際に採取したがんの組織を使います。組織がない場合は、新たに組織を採取します(場合によっては血液を採取する必要があります)。
②組織のDNAを調べ、判定します
複製されたマイクロサテライトに一定以上の異常が認められる場合を「陽性(MSI-High)」といい、それ未満の場合を「陰性」といいます。
検査の結果と治療の選択
①検査の結果がわかるまでの期間
受診される施設間で差がありますが、おおよそ1~2週間でわかります(再検査が必要な場合には長くなる可能性があります)。
②結果と治療の選択について
陽性(MSI-High)か陰性かによって、選択できる治療法が異なります。
【コラム】その他の検査:がん遺伝子パネル検査とMMR-IHC検査
MSI-High固形がんであるかどうかの判定は、「がん遺伝子パネル検査」という検査でも可能です。
がん遺伝子パネル検査は、遺伝子の情報を高速で解析する装置を用いることで、1回の検査で多数の遺伝子を同時に調べることができる検査です。解析には、MSI検査と同じように、手術のときや内視鏡検査などで採取したがんの組織を用います。
ただし、すべての患者さんが受けられる検査ではなく、いくつかの条件を満たす場合に、特定の医療機関で検査を受けられます。
また、MSI-Highはミスマッチ修復(MMR:mismatch repair)というDNAの修復機能の低下により起こります。がんの組織を用いてMMRタンパクが正常に発現しているかを調べる、「MMR-IHC検査」という検査によりタンパク質の発現消失が見られた場合は、MSI-Highと同様に免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けることが可能です。
リンチ症候群
がんの中には、遺伝が原因となる場合があります。その中の一つにリンチ症候群があります。この病気は比較的若い年齢で、大腸や子宮、胃などさまざまな臓器にがんができることが知られています。
リンチ症候群は遺伝性の病気であり、患者さんのお子さんやご兄弟(姉妹)に50%の確率で受け継がれます。
リンチ症候群が疑われる場合には、患者さんご本人だけでなく、ご家族もこの病気の可能性を知り、定期的にがんの検査を受けることががんの早期発見・早期治療に役立つと考えられます。
リンチ症候群の頻度
海外で50種類以上のさまざまながん(約15,000例)を対象に行われた解析結果では、MSI-Highを有する方のうち、16.3%がリンチ症候群であったと報告されています。
- MSI-Highを有するがんは15,045例のうち326例(2.2%)
- MSI-Highを有するがんのうち、リンチ症候群であったのは53例(16.3%)
MSI-Highを有する方でリンチ症候群の確定診断を希望される場合には、さらなる遺伝子検査が必要となります。
Latham A et al. J Clin Oncol 2019; 37(4): 286-295.より改変
監修:山﨑 健太郎 先生
静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 部長
兼 治験管理室 部長
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