頭頸部がんとは
頭頸部がんとは 1, 2)
頭頸部(とうけいぶ)とは、鼻、口、舌、のど、あご、耳などを含む頭部から頸部(首)までの範囲をさします(脳、眼球、歯をのぞく)。これらの器官は食事をする、呼吸をする、声を出す、聞くといった、日常生活を送る上で必要な行為と大きく関わっています。喉頭は空気の通り道である気道の入り口にある器官で、声帯などがあります。咽頭は鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜でできた器官です。
頭頸部に発生したがんをまとめて、頭頸部がんと呼びます。主な種類として口腔がん(舌がんなど)、鼻・副鼻腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、唾液腺がんなどがあります。
頭頸部がんが発生する部位
1)岸本誠司 他(編). がんを見逃さない-頭頸部癌診療の最前線, 中山書店, p2, 2013
2)渡邉一夫 他(監). からだにやさしい耳・鼻・喉・口・眼のがん治療, 近代セールス社, p8, 2018
症状 3, 4)
頭頸部がんは、「食事がしみる」「鼻づまり」「せき」など、風邪や口内炎などに似た症状や「のどの違和感」「首の腫れ」などで見つかることが多く、患者さんみずから異変に気付くことがあります。
頭頸部がんのおもな症状について示します。がんができる部位によって症状は異なります。
3)田原信 他(編). 臨床頭頸部癌学-系統的に頭頸部癌を学ぶために-改訂第2版, 南江堂, p32-p37, 2022
4)国立がん研究センターがん情報サービス(2023年8月時点)
発生の要因 5-7)
飲酒と喫煙は、頭頸部がん全体の約8割に関係するといわれています 5)。両方の習慣がある人ではさらにリスクが高くなります 7)。そのほか、口内の不衛生や歯並びの悪さ、副鼻腔炎(ちくのう症)の長期化なども要因として挙げられます。
また、上咽頭がんではエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、中咽頭がんではヒトパピローマウイルス(HPV)によるウイルス感染でがんが発生する場合があります。特に最近ではHPVによる若年者の中咽頭がんが注目されています。
5)落合慈之 (監). 耳鼻咽喉科疾患ビジュアルブック 第2版, 学研メディカル秀潤社, p207-p209, 2018
6)岸本誠司 他(編). がんを見逃さない-頭頸部癌診療の最前線, 中山書店, p6-p7, 2013
7)鈴木幹男 他. 日本臨床増刊号 頭頸部癌学. 日本臨床社, p112-p115, 2017
患者数 8)
50歳代以降の男性に多く、2015年の口腔・咽頭がん、喉頭がんの患者数をみると、特に40歳代後半から増える傾向がみられます。1975年から2015年までの口腔・喉頭がんの年間罹患率(人口10万人のうち何人が新たにがんになったか)をみると、男女とも増えており、頭頸部がん全体でも増えている傾向にあります。
口腔・咽頭がん、喉頭がんの年齢階級別罹患率(2015年)
口腔・咽頭がん罹患率年次推移(1975~2015年)
8)国立がん研究センターがん情報サービス(2023年8月時点)
監修:塚原 清彰 先生
東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 主任教授
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