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治療

治療の考え方1)


食道がんの治療は、がんの進行の程度を分類した病期(ステージ)ごとに主な治療方針がおおよそ決まっています。しかし、病期が同じでも必ずしも治療法が同じわけではなく、全身の状態や患者さんの希望などを総合的にみながら決めていきます。

食道がんの治療には、内視鏡治療、手術、放射線療法、薬物療法(化学療法、免疫療法)の大きく4つがあり、これらをひとつ、あるいは組み合わせて治療を行います。なお、がんの種類や進行度に応じて、これらの治療法を組み合わせることを集学的(しゅうがくてき)治療といい、近年、食道がんでは、手術と薬物療法(化学療法) 、薬物療法(化学療法)と放射線療法を組み合わせた化学放射線療法、化学放射線療法と手術、といった組み合わせによる集学的治療が多く行われています。

1.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p13-53, 2022

内視鏡治療2,3)


リンパ節転移のないごく早期の食道がんの方では、手術ではなく、内視鏡治療が選ばれることがあります。
手術と比較すると体への負担が小さく、切除したがん組織を顕微鏡で観察し、がんが残っている可能性やリンパ節への転移の可能性などを詳しく調べます。そして、必要がある場合は手術や化学放射線療法などの追加治療を検討します。

治療は、内視鏡を使って食道の内側からがんを切除します。切除方法によってナイフで切り取る方法とワイヤーで焼き切る方法の2種類があります(下図参照)。

国立がん研究センターがん対策情報センター. がんの冊子 各種がんシリーズ102 食道がん, p17-18, 2023より改変

2.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p55-57, 2022
3.国立がん研究センターがん対策情報センター. がんの冊子各種がんシリーズ102 食道がん, p17-18, 2023

手術4-6)


食道がんの標準的な治療は手術です。内視鏡治療が難しい場合やリンパ節転移があるものの他の臓器への転移はない方などが対象となります。
食道がんではがんの発生した部位によって手術方法が異なり、頸部(けいぶ)の場合、近くにある声帯や気管を切除することもあれば、腹部の場合には胃までの切除が必要となることもあります。いずれの場合も食道がんの手術はとても難しく長時間となるため、体の負担が大きいとされています。

手術では、がんのある部分の食道を切除し、さらに転移した、または転移が起こりえるリンパ節とその周りの組織を合わせて切除します(リンパ節郭清[かくせい])。また、切除された食道の代わりに、胃や腸を使って新しく食べ物の通り道を作る手術(再建術)も一緒に行います(下図参照)。

食道がんの手術の流れ

また、食事ができるようにすることを目的とした手術もあります。がんの進行によって食道が狭まり食事が困難となった場合に、食道とは別に胃や腸を使って新しい通り道を作る場合をバイパス手術といいます。一方、食道の狭まった箇所にステントとよばれる医療用の管を挿入し食道を広げる手術をステント留置術といいます。

食道が狭まったときの手術

4.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p59-85, 109-118, 2022
5.小澤壯治 他編. 臨床食道学, 南江堂, p206-214, 2015
6.医療情報科学研究所 編. 病気がみえるvol.1 消化器 第6版, メディックメディア, p77, 2023

放射線療法7)


放射線療法は放射線を一定の期間少しづつ直接がんに当てることでがん細胞にダメージを与える治療です。がんを治すことを目的とした根治照射と、がんによる症状を和らげることを目的とした緩和照射があります。根治照射では、他の治療と組み合わせて行う場合もあり、特に化学療法と組み合わせて行う化学放射線療法はより効果的とされ、手術を行わない食道がんで重要な治療選択肢のひとつになっています。

根治照射

がんが食道周囲にとどまっており、放射線を安全に当てられる場合に、がんの消失を目指して放射線を当てます。

緩和照射

がんが広範囲に広がっており、食事がつかえたり痛みや呼吸がしづらいなどの症状がある場合に、症状を緩和させることを目指して放射線を当てます。

7.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p87-99, 109-118, 2022

薬物療法8,9)


薬物療法は、手術や放射線療法と異なり、薬剤を用いることで全身に広がったがん細胞に作用させる治療です。手術や放射線療法と組み合わせて、同時あるいは順番に行うこともあります。全身状態やがんの状況、目指すべき治療ゴールに応じて最適な治療法を選びます。

食道がんの薬物療法には、抗がん剤による化学療法と、免疫チェックポイント阻害薬を用いる免疫療法があります。薬にはそれぞれ特徴的な副作用がありますので、体の状態を観察しながら治療を行います。また、薬物療法の効果がみられなくなった場合は、他の種類の薬に変更することを検討します。
最近では、自分のがんの特徴(バイオマーカー)を調べることで、効果が期待できる治療法がわかることがあります。気になる方は一度、医師にご確認ください。

化学療法

抗がん剤という、がん細胞の分裂や増殖などを阻害する薬剤によって、がんを小さくしたり、進行を抑えることを目指す治療です。
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用するため、様々な副作用があらわれることがあります。

免疫療法

免疫は、細菌やウイルス、がん細胞などの異物をみつけると、それを排除するために様々な働きをします。一方、その働きが過剰になりすぎて体にダメージを与えないようにブレーキをかける機能も備わっています。このような免疫の働きを利用し、がん細胞を排除するのが免疫チェックポイント阻害薬です。
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞によって抑えられていた免疫機能を再び活性化させるため、免疫が働き過ぎることによる副作用があらわれることがあります。
また、免疫チェックポイント阻害薬で治療をする場合、PD-L1検査を行うことがあります。

※PD-L1検査の詳細については、医師にご相談ください。

8.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p13-53, 87-99, 2022
9.国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(更新・確認日:2023年9月27日)https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html

対症療法10)


対症療法(緩和的対症療法)とは、食事や呼吸などに関する症状や精神的、社会的な苦痛など、治療によって生じる様々な苦痛を和らげることを目的とした治療です。
進行に伴って症状があらわれる食道がんでは、診断時から日常生活に影響がある症状がある場合も多いため、治療の早い段階から緩和的対症療法を組み合わせていくことも大切です。気になる症状は、なるべく医師に相談するよう意識してみてください。

10.日本食道学会編. 食道癌診療ガイドライン2022年版, 金原出版, p109-118 2022

監修:廣中 秀一 先生
杏林大学医学部 腫瘍内科学 教授


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