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食道がんとは

食道について1-3)


食道はのどから胃の入り口までをつなぐ筒状の臓器です。胃や腸のように食べ物を消化する働きはなく、筋肉の動きで口から入った食べ物を胃に送り届けます。

食べ物を口から飲み込むと食道の筋肉が収縮します。この収縮によるくびれが上から順に次々と起こることで、食べ物が胃まで運ばれていきます。寝ている姿勢でも問題なく食事ができるのはそのためです。

食べ物を胃に運ぶ食道の動き

図:食べ物を胃に運ぶ食道の動き

宮﨑招久 他監. 病気を見きわめる 胃腸のしくみ事典, 技術評論社, p15, 2017

食道は、長さ約25cm、太さ約2~3cmであり、のどからみぞおちにかけて体のほぼ中央にあります。上から順に、くび(頸部[けいぶ])、胸(胸部)、お腹(腹部)と、大きく3つの部位に分かれており、それぞれの部位を頸部食道、胸部食道、食道胃接合部領域といいます。胸部食道は、肺や心臓、心臓から出ている大動脈などの重要な臓器が近くにあります。

食道と周りの臓器

食道の壁は粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4層からなり、胃や腸よりも1枚少なく外側に漿膜(しょうまく)とよばれる強い膜がありません。

食道の構造

図:食道の構造

1.細川正夫 監. 食道がんのすべてがわかる本, 講談社, p10-13, 2015
2.宮﨑招久 他監. 病気を見きわめる胃腸のしくみ事典, 技術評論社, p15, 2017
3.日本食道学会編. 食道癌取扱い規約第12版, 金原出版, p6-7, 2022

食道がんの特徴4-6)


食道がんは頸部(けいぶ)食道、胸部食道、腹部食道などに発生するといわれていますが、日本人では胸部食道が約86%を占め、頸部食道、食道胃接合部領域の割合は5~8%程度と報告されています4)

日本で1年間に10万人中20.9人が新たに食道がんと診断され5) 、女性よりも男性に多い傾向がみられます。要因は主に喫煙と飲酒であり、50歳代から増加し70歳代にもっとも多く発生します。また、ほとんどの食道がんは食道の表面をおおう粘膜(扁平上皮[へんぺいじょうひ])から発生する、扁平上皮がんというタイプです。一方で欧米では胃酸の逆流が原因のひとつとされる腺(せん)がんが多くみられます。日本でも腺がんの割合が年々増加しており、食の欧米化が関係していると考えられます。

日本における食道がんの現況

性別
男女比 約5:1

年齢
60~70歳代が全体の年齢層の約74%

発生部位
胸部食道:約86%
食道胃接合部領域:約8%
頸部食道:約5%

組織型
扁平上皮がん:約87%
腺がん:約5%

Watanabe M et al. Esophagus 2023: 20; 1-28

図

食道がんは内側の粘膜に発生し、その後、周囲の組織を破壊しながら縦方向(垂直方向)と横方向(水平方向)に浸潤(しんじゅん)していきます。粘膜層にとどまっているがんを早期食道がん、粘膜下層まで進んだものを表在性食道がん、固有筋層まで進んだものを進行がんといいます。

4.Watanabe M et al. Esophagus 2023: 20; 1-28
5.国立がん研究センターがん情報サービス (更新・確認日:2023年9月27日)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/4_esophagus.html
6.小澤壯治 他編. 臨床食道学, 南江堂, p15, 2015

症状と進行について7,8)


がん自体は痛みなどの症状を起こすものではないため、早期の食道がんはほとんどの場合は無症状です。しかし、がんが進行して大きくなると、食道の内側を狭めたり、周りの臓器や神経を圧迫することで徐々に症状があらわれてきます。

食道の壁には多くのリンパ管や血管が走っており、胃や腸と異なり外側に漿膜(しょうまく)のない食道は、他の臓器への転移が起こりやすいことが特徴です。食道の周囲のリンパ節に加えて、血液の流れにのって肺や肝臓、骨、脳など、様々な臓器に転移することがあり、その場合、転移した臓器ごとに様々な症状があらわれるようになります。

代表的な食道がんの症状

・食べ物を飲み込みにくい

・のどがつかえる

・のどがつまる

・食事を十分にできず体重が減る

・声がかれる(嗄声[させい])

・咳が出る(咳嗽[がいそう])など

進行にともなってあらわれる食道がんの症状

進行にともなってあらわれる食道がんの症状

医療情報科学研究所 編. 薬がみえるvol.3 第2版, メディックメディア, p437, 2023

7.医療情報科学研究所 編. 薬がみえるvol.3 第2版, メディックメディア, p437, 2023
8.国立がん研究センターがん対策情報センター. がんの冊子 各種がんシリーズ102 食道がん, p4-5, 2023

重複(ちょうふく)がんとは


食道がんの約2割が、食道以外にも複数の場所にがんが発生する「重複がん」といわれています。
食道がんの主な要因である飲酒や喫煙をはじめ、食べ過ぎや肥満といった生活習慣が長く続いている場合、食道だけでなく他の部位にも同じように悪い影響を及ぼしてしまうため、全身にがんが発生しやすい状態となります。

特に食道と同じように刺激を受けている、咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)、胃腸や肺では重複がんが多く、これらは同時に発生することもあれば、異なる時期に発生することもあります。

食道がんと重複がん

監修:廣中 秀一 先生
杏林大学医学部 腫瘍内科学 教授


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