子宮体がんとは
子宮の構造と子宮体がん
子宮体がんとは1)
子宮は、入口部分の「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」とその奥の「子宮体部(しきゅうたいぶ)」に分けられます。このうち、子宮体部にできるがんが「子宮体(しきゅうたい)がん」です。子宮内膜の細胞で発生することから、「子宮内膜(しきゅうないまく)がん」の別名もあります。子宮頸部にできる子宮頸がんとは、原因、診断法、治療法、予後などがまったく異なるので注意しましょう。閉経前後の40代後半から60代にかけて発症することが多く、若い人では比較的少ないですが、最近、20代の子宮体がんも増えており、注意が必要です。
1.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第2版. 金原出版, p74-75, 2016.
子宮体がんの発生原因2)
子宮体がんはその発生原因により2つのグループに分けられます。1つは女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞(らんほう)ホルモン)の刺激によって生じる「タイプ1」と呼ばれるグループです。エストロゲンには子宮内膜を厚くする働きがあります。通常は月経周期に合わせて分泌量が変わりますが、なんらかの原因でエストロゲンが長期的、継続的にたくさん分泌されると、子宮内膜はどんどん厚くなってしまいます。タイプ1は、この異常に厚くなった内膜の異変から生じると考えられています。閉経前後の年齢層に多くみられますが、20代や30代での発症もまれにみられます。もう1つはエストロゲンが関与しない「タイプ2」と呼ばれるグループです。タイプ1と違って閉経後に多くみられ、突発的に生じると考えられ、転移が速いなどの特徴があります。子宮体がんの多くはタイプ1です。
子宮体がんのタイプ別特徴
子宮体がんの主なリスク因子
2.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第2版. 金原出版, p75-77, 2016.
子宮体がんの特徴
子宮体がんの患者数
子宮体がんは以前は日本人では少なく、40年ほど前は子宮にできるがん全体のわずか数%を占めるに過ぎませんでした3)。しかし、国立がん研究センターがん対策情報センターによれば、2019年、子宮体がんの罹患数(かかった人の数)は約17,880人と、子宮がんの罹患数(約29,136人)の50%を超えています4)。背景には、食生活の欧米化などが関与しているといわれています3)。
子宮体がん罹患率の年次推移(全国推計値,女性,全年齢)
国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」グラフデータベース(2022年10月5日時点)
子宮体がんの年齢階級別罹患率(全国推計値, 女性, 2019年)
国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」グラフデータベース(2022年10月5日時点)
3.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第2版. 金原出版, p74-77, 2016.
4.国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(2022年10月5日時点)
子宮体がんの症状5)
初期の自覚症状として代表的なのが、月経のとき以外に起こる不正出血です。「閉経したはずなのにまた出血している」といった場合も注意が必要です。また、不正出血を月経と思い込んでいる方も多いようです。初期では腹痛もないので、月経以外の不正出血があれば医療機関を受診しましょう。なお、子宮がん検診は一般に子宮頸がんだけを調べる場合が多く、子宮体がん検査は含まれないことがほとんどです。子宮がん検診を受けている人でも油断は禁物です。
5.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第2版. 金原出版, p77, 2016.
監修:田畑 務 先生
東京女子医科大学 産婦人科 教授・講座主任
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