どんな検査をするの?
悪性リンパ腫の診断の流れ
ここでは、一般的な悪性リンパ腫の診断の流れについて解説をします。
リンパ節に痛みのない腫れがあるなど、悪性リンパ腫が疑われる場合は、診断のための診察や検査を行います。悪性リンパ腫の種類によっては、すぐにでも治療を始める必要があります。気になる症状があるときは早めに受診して診断を受けることが大切です。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 Web版,2020 より作成
悪性リンパ腫の検査の内容
悪性リンパ腫が疑われる場合には複数の検査が行われます。それによって、悪性リンパ腫か否かの診断だけでなく、悪性リンパ腫の種類(ホジキンリンパ腫か、B細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫か)、がんの広がり(がんの進行の程度:病期分類)、合併症の有無などを確認することができます。
診察
問診
リンパ節の腫れている場所や、いつごろから続いているのかなどを質問される。ほかに気になる症状があれば、このときに医師に伝えられるように準備しておく。
触診
医師がリンパ節を直接触って、腫れのかたさ、大きさ、痛みの有無などを確認する。
基本的な検査
血液検査
全身の状態を知るために行われる。また、LDH(乳酸脱水素酵素)、可溶性インターロイキン2受容体(sIL2R)、CRPなど、悪性リンパ腫の病勢に特徴的な物質の数値なども調べる。
超音波検査
リンパ節の腫れが感染や炎症によるものか、がんによるものかを調べる画像検査のひとつ。
画像検査(CT検査など)
CT検査などによって、リンパ節の腫れがないか全身を調べる。がんの広がりや大きさも調べることができる。
病気を確定するための検査
リンパ節生検
悪性リンパ腫の診断と種類(組織型)を決定するためにもっとも重要な検査。全身麻酔または局所麻酔をかけたうえで、腫れているリンパ節や組織の一部を手術によって採取し、細胞を顕微鏡で観察する(病理診断)。ここで採取した組織は、染色体検査や遺伝子検査などにも使われる。
がんの広がりを調べる検査
PET検査
がんがどこにあるか全身を調べる画像検査。この検査では画像撮影の直前に、放射性ブドウ糖を含む薬剤を注射する。がん細胞は正常な細胞よりもさかんにブドウ糖を取り込む性質があるため、がん細胞がある場所には放射性ブドウ糖も集まる。そのため、注射後に全身をPET(陽電子放出断層撮影法)という放射線を映して画像化する装置で撮影すると、がんのある場所が光るように映し出される。他の検査に比べてより小さながんも見つけることができるため、転移の有無を調べるのに適した検査で、治療効果の判定にも積極的に用いられる。
PET検査による画像の例
がんのかたまりが肺と肝臓に黒く映っている(脳、心臓、腎臓、膀胱などは正常でも黒く映る)
骨髄検査
がん細胞が骨髄(こつずい)の中まで入り込んでいると疑われる場合に行う。
局所麻酔をかけたうえで、腰や胸の骨に針を刺して骨髄液を採取して、がん細胞が骨髄の中に広がっていないか細胞を顕微鏡などで調べたり、染色体検査や遺伝子検査を行ったりする。やや太い針を使って、骨髄組織をかたまりのまま採取する(骨髄生検)こともある。
脳脊髄液検査(のうせきずいえきけんさ)
がん細胞が脳や脊髄(せきずい)に入り込んでいると疑われる場合に行う。腰椎(ようつい)の間に細い針を刺して脳脊髄液を採取し、がん細胞が中枢神経(脳)に広がっていないか調べる。
その他の検査
がんがあると疑われる部位により、必要な検査が追加されます。胃腸を調べる消化管内視鏡検査、脳や頭部を調べるCT検査やMRI検査などがあります。
病期分類
がんの進行の程度の分類を病期(ステージとも呼ばれる)といい、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の4つに分類されます。また、全身症状(B症状)の有無やリンパ系組織以外の臓器にがんがあるかどうかも病期の決定には考慮されます。
病期分類(Ann Arbor[アン・アーバー]分類)
監修:照井 康仁 先生
埼玉医科大学病院 血液内科 教授
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