カラダのこと
カラダのなかで起こっていることを理解しながら、治療の目標を明確にしていきましょう。
カラダのなかで何が起きているの?
「転移」とは、目に見えないがん細胞が、血液やリンパ液にのって遠くの臓器や組織に流れつき(微小転移)、時間と共に目に見える大きさになった状態です。転移が分かったときは、これまでの治療が無駄だったように感じるかもしれません。しかし、最初の治療がここまで病状を抑えてきたことも事実です。
治療の目標を明確にしましょう
がんが乳房にとどまっていた段階では、「治す(根治)」ことが優先されてきました。一方、これからの治療は、多くの場合、がんの症状を抑えて、カラダやココロの痛みや副作用などをコントロールしながら、家事、育児、仕事や趣味などをふくめた日常生活を維持していくことが大きな目標になってきます。担当医としっかり話をして、あなたらしい生活を送るための目標を見つけていきましょう。
なかには、担当医から「ステージⅣ(骨や肺、肝臓など乳房から離れた臓器に転移がある場合)」と診断され、「もうあとがないの?」と感じている方もいるかもしれません。医師やご家族とよく相談しながら何を優先するのかを考えていきましょう。
どのような治療をするの?
基本的にお薬を使った全身治療が中心となります。治療に使われるお薬は
1.ホルモン療法(内分泌療法)
2.分子標的治療
3.化学療法(抗がん剤治療)
4.免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)
の4つです。がん細胞の特徴(サブタイプ)に応じて使い分けます。サブタイプによってお薬の効果に違いが生じるので、あなたのがんの特徴を再確認することが重要となります。
また、転移した場所やがんの大きさによっては、症状をやわらげるために放射線照射や手術を組み合わせることもあります。あなたが納得できる治療方法を担当医と相談して決めていくようにしましょう。
セカンドオピニオンという選択肢
「副作用がキツくても、病状を抑えたい」「症状やいろいろな痛みをとる緩和治療を受けたい」など、あなたの希望や価値観によっても選択肢が大きく変わります。考えることが増えるため、初回治療のときとはまた違う難しさがあるでしょう。
より納得した治療選択のために、セカンドオピニオンという選択肢があります。セカンドオピニオンは治療選択のための大切なプロセスですから、「担当医に悪いかな」とためらう必要はありません。担当医に申し出にくいときは、看護師やがん相談支援センターの相談員などに手助けしてもらいましょう。
遺伝性乳がんとは?
乳がんの5~10%は「遺伝性乳がん」と言われており*1、生まれながらに乳がんや卵巣がんを発症しやすい体質と言われています。代表的なものが「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子に変異がみられる「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)※」です。一定の条件を満たしていれば、特定の医療機関でBRCA遺伝学的検査と遺伝カウンセリングを保険診療で受けられます(詳しくは担当医にご相談ください)。検査を受けるか受けないかはあなたの判断です。ご家族も交えて話し合いましょう。
最近では、遺伝子変異のある患者さんに対して治療効果が期待できるお薬も使えるようになっているので、選択肢を広げるためにも遺伝性乳がんが疑われる場合はご家族をふくめて検討してみてもよいでしょう。「BRCA1」「BRCA2」の変異がある場合は、その事実を知っておくことで、あなただけではなく血縁者にとっても、健康管理上有用なことがあります。
*1. 日本乳癌学会編 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版 金原出版「一般社団法人日本乳癌学会 市民のみなさまへ」のサイトでは、「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」最新版をご覧いただけます。
※ HBOC: Hereditary Breast and Ovarian Cancer JOHBOC(一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構)は、遺伝性乳がん卵巣がんの研究や人材育成などを行っている団体です。医療機関、患者さんやご家族向けの情報やパンフレットなどが掲載されています。